部下が主体性を発揮しない原因は会社にある?!

目次
会社のご要望で必ず出てくる「主体性」
うちの社員は主体性がイマイチ、言われたことしかやらない、指示されないと動かない、もっと自分で考えて行動できる人財になってほしい…など研修のご依頼をいただく際、「主体性」というキーワードがよく出てきます。
そもそも主体性とは、「他人に指示・強制さえるのを待つのではなく、状況に応じて自ら判断を行い、自分の意志で行動すること」。いわゆる「指示待ち」とは対極にあります。
だからこそ、企業の経営者、管理職の皆さまが、社員に主体性を発揮してほしいと思うは当然のことでしょう。ですが、その際、主体性を発揮「させたい」と、自分たちを顧みずに社員にだけ矢印を向けていませんでしょうか。
最初に、考えるべきなのは次の3点です。
- 自社は社員が主体性を発揮したいと思える会社なのか
- 自社は社員が主体性を発揮できる環境なのか
- 自社は社員が主体性を発揮したいと思える関わりをしているのか
主体性の発揮に欠かせない4つのポイント
私は、主体性の発揮には以下の4つが大切だと考えています。
- 心理的安全性
- 自己イメージ
- 目的・動機
- セルフマネジメント
そもそも、職場環境が整っていなければ主体性を発揮することはできません。職場環境に関わるのは「心理的安全性」だけと思われるかもしれませんが、「自己イメージ」「目的・動機」「セルフマネジメント」も、実は職場環境が大きく関わってきます!
それぞれ、詳しくみてみましょう。
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心理的安全性
心理的安全性は、組織行動学の専門家として知られるエイミー・エドモンドソンが1999年に提唱した心理学用語であり、2016年にGoogleが「生産性が高いチームは心理的安全性が高い」との研究結果を発表したことから、一気に注目を集めるようになりました。
心理的安全性とは「自分の過ちを認めたり、質問をしたり、新しいアイデアを披露したりしても、誰も自分を馬鹿にしたり罰したりしないと信じられる」こと。地位や経験に関わらず、誰もが意見を言い合うことのできる環境は、心理的安全性が高いです。
心理的安全性についてイメージがしにくい場合は、その対極である「心理的非安全」について考えてみるとわかりやすいでしょう。
- 何か問題が起こったら犯人探しが始まる
- ミスの報告をすると、事情も聞かずに一方的に怒られる
- 質問をすると、「こんなことも分からないのか」とバカにされる
- アイデアを出したら、第一声が「コレ本当にうまくいくの?」と言われる
- 出したアイデアに賛同はしてくれるものの、業務の交通整理はしてくれないので、アイデアを出せば出すほど自分だけ仕事が増えていく
- 上司のお気に入りかそうでないか、人によって態度が違う
このような職場では、余計なことはせず、言われたことを言われた通りに淡々とやっていた方が安全です。当然、主体性は発揮できません。若手ももちろんですし、中途入社者も然り。転職してきてすぐは積極的だったのに、だんだん周りに埋没していって期待外れと感じても、それは本人に原因があるのではなく、職場の心理的安全性が低い可能性だってあるのです。

自己イメージ
自己イメージとは、自己肯定感(自分の良いところだけでなく欠けているところも含めてありのままの自分を認められる感覚)、自己効力感(私はできると自分の可能性を認識できていること。簡単に言うと自信)とお考えください。
主体性の発揮のしやすさには、これら、自己肯定感や自己効力感などの自己イメージが一定程度育っていることも影響します。
自己イメージは個人要因ではありますが、人は環境の生き物。どのような環境に身を置くかで自己イメージも影響を受けます。上司の関わり方によって、「自分はダメだ」と自分にダメ出しをしてメンタルダウンしたり自信喪失したりする場合もあれば、少しずつ小さな「できた」を積み上げて、思い切ってやってみようと一歩踏み出す心を育てることもできるのです。
そのためには、できていないところだけではなく、できていることにもしっかり目を向ける。そしてそれを具体的な言葉にして伝える。スモールステップで小さな達成感を積み重ねられるようにして成長を感じられるように育成する。
上司や周囲がこのように働きかけていくことで、社員の心の中に、主体性が発揮しやすくなる心の土台ができていくのです。
目的・動機
職場に心理的安全性があっても、やってみようと思える心の土台があっても、自分で考えて動こうという動機がなければ人はわざわざ行動を起こしません。中には、自分で仕事の意義を見出してどんどん行動する方もいますがそれは一部。仕事が作業になっている方、忙しさからとにかく目の前の仕事をこなすモードに入っている方の方が割合としては多いように思います。
だからこそ、上司の関わりが大切です。人は「WHY」で動くと言われます。皆さまは何か新しい業務の指示をする際、何をするのか「WHAT」、どのようにするのか「HOW」だけではなく、「WHY」を伝えていますでしょうか?
WHYとは例えば、
- 自分たちの会社や部署の仕事にどのような意義があるか
- 世の中に、お客様に、他部署にどんな風に役に立つのか
- その業務にはどんな意義があるのか
- 全体の工程のどの部分なのか
- それがなぜ必要なのか
- それをすることが後工程やチームや会社やお客様にどんな影響をもたらすのか
などです。
目的や理由もわからず、指示された業務をただ行う。それでは、主体性は育ちません。また、ここまでは会社視点での「WHY」ですが、それだけでは会社や上司の価値観の押し付けになることもあります。その業務・行動をすることが、本人にとってどんな価値やメリットがあるのか、社員目線での「WHY」もぜひ欲しいところです。
そうするには、部下となる社員のモチベーションの源泉や、どんなことに喜びや達成感、充実感を得られるのか、興味関心、どんな未来を思い描いているか、今何に困っているかなど、普段から部下とコミュニケーションを取って、把握しておくこと。そのうえで、部下の興味関心と業務を紐付けて伝えることが大切です。
新しい仕事に取り組むことで、自分にもいいことがありそう、と思えるようになれば、当然主体性は発揮しやすくなります。
セルフマネジメント
これら、心理的安全性、自己イメージの一定の高さ、目的・動機がそろえば、あとは行動するだけです。ですが、人間、現状維持が一番楽なもの。その一番楽なゾーン(コンフォートゾーン)から目指す方向に向けて一歩踏み出すには、自分自身の「ちょっと面倒だな」「ちょっと不安だな」という気持ちを超える必要があります。
「セルフ」マネジメントなので個人要因ではありますが、ここでも会社や上司の関わり方によって背中を押すことはできます。部下のことを詳しく知ったうえで、不安な気持ちも受け止めながら具体的な行動に移していけるように、一歩踏み出す勇気が持てるように、そっと背中を押す、行動するために必要な知識やスキルの習得などをサポートするなど一つ一つの関わりは、部下が主体性を発揮しやすくなる職場作りに大いに役に立ちます。

主体性を発揮しやすくなる関わり・環境づくりをしましょう
高度経済成長期やバブルの頃は社会に勢いがあったので、放っておいても社員は未来に希望を抱いて、その目指す未来に向けて主体性を発揮できていたかもしれません。
ですが、リーマンショック、震災、コロナ禍など、今は先の見通しが立たないVUCAの時代(変動性(Volatility)、不確実性(Uncertainty)、複雑性(Complexty)、曖昧性(Ambiguity)の頭文字)ともいわれています。
主体性は無理やり発揮“させる”ものではありません。社員が主体性を発揮しやすくなるように、主体性を発揮したいと思えるような関わり、発揮できるようになる関わりと環境を作り、一人一人が生き生きと働きたいと思える会社にアップデートしていきましょう!
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咲良美登理事務所 代表 咲良美登理
社会保険労務士。21世紀職業財団認定ハラスメント防止コンサルタント。中小企業を中心に、ハラスメント相談窓口サービスや窓口担当者養成講座の提供、事案解決サポートや人材育成研修など、ハラスメント対策を起点とした生産性向上のコンサルティングを行っている。
ご相談・お問い合わせ▶https://sakura-midori.jp/contact