メンバーに対して、地雷ワードを使っていませんか?

先日、2週続けて、研修登壇のため東北に行きました。

東北へは、大学サイクリング部の夏合宿(輪行バッグに自転車を入れてツーリングしていたのです)、社会人になってからの蔵王へのスノボ旅行以来。街中を歩くのも初めてですし、仕事でも初めて。

研修先の方もホテルの方も飲食店の方も出会う方々がとても親切で、非常に心が温かくなる6日間でした。

さて、そのように、遠方も含め、ハラスメントや部下育成をテーマに研修をする機会を多くいただいているわけですが、その中で最近興味深く思うことがあったので、本日はそのことについてご紹介いたします。

それは何かというと、

上司はパワハラにならないようにかなり気を使って発言しているが、かなり気を使っているにもかかわらず、部下が心のシャッターを閉める地雷ワードは使ってしまう、

ということです。

部下育成にフィードバックは欠かせません。研修では、フィードバックスキルのトレーニングもよくお伝えしています。フィードバックでは、客観的事実に基づいて、どんな影響があったかを非難にならずに伝えることがポイントの一つになります。

では質問です。

下記の言葉は客観的事実に基づいていると言えるでしょうか。

「いつもミスするよね」

「〇〇さんのせいで」

「間違い」

「自分勝手な判断で」

「〇〇さんの不注意で」

「余計な時間がかかる」

「迷惑しています」

「置きっぱなし」etc.

これらは過去数年、フィードバックトレーニングをする中で出てきた言葉たちです。

いかがでしょうか?チェンジフィードバックはメンバーの行動変容が目的ですが、これを言われて「確かにそうだな!次は行動を変えよう!」と素直に思えるメンバーはそうそういないのではないでしょうか。

多くのメンバーは「責められた!」と心のシャッターをガラガラと閉めてしまいます。その場しのぎでYESと言っても、効果は長持ちしません。

そして、これらの言葉、パワハラにならないようかなり気を使っていらっしゃる方からもトレーニング中ポロリと出てくるのが興味深いところなのです。

パワハラにならないよう気を使って発言はしているけれど、表現が非難のように聞こえてしまう。なので、パワハラにはならないけれどもメンバーとの感情摩擦は起こり、いまいちメンバーとチームとして心を合わせて仕事がしにくい。

そのような状態の職場も結構あり、非常にもったいないと感じています。

なので、研修でこのような地雷ワードが出てきた場合にはこんな風に表現するとどうでしょうか、というご提案もしています。

例えば「迷惑している」

確かにメンバーの行動がもたらした影響であり、正直な気持ちかもしれません。正直であることはとても大切なことなのですが、非難めいて聞こえてしまっては、メンバーの納得感が上がらないのでフィードバックの効果がガタ落ちしてしまいます。

このような時には、この「迷惑」という自分の気持ちをよく見てみてはいかがでしょうか。

なぜ私は「迷惑」と思っているのか。自分の気持ちを掘りさげてみると、例えば、“その部下のその行動が続くと、〇〇のようなトラブルが起こりそうで心配” など、その裏にある気持ちが出てくると思います。

であれば、伝えるべきはそちらです。

「迷惑している」と言われるのと、「このままだと〇〇のようなトラブルが起こりそうで心配なんだ」と言われるのでは、相手の心への届き方が全く違いますよね。

次は「置きっぱなし」という言葉。こちらも非難めいて聞こえますね。

これは客観的事実かというと、「主観的」事実です。自分の「自分は正しい、相手が間違っている」というものの見方が反映されています。

客観的事実は、「〇〇に□□が置いてありましたよ」です。

そのメンバーは単に置き忘れたのかもしれませんし、その場所にそれを置く何か事情があったのかもしれません。客観的事実で表現できれば、単に置き忘れの場合、メンバーから「次気を付けます」と心からの返事も返ってくるでしょう。

動線を考えるとそちらに置いた方が効率的、などの理由があれば、「実は」とそのような提案もしてくれるでしょう。非難めいた口調でフィードバックするとそういう流れにならないのでとてももったいないのですよね。

せっかくメンバーの心情に気を使うお気持ちがある上司の皆様なので、客観的に情報を伝えて相手の話も聞き、建設的な意見交換に繋げる心理的安全なコミュニケーションにステップアップしていただきたい!

そうすることが、メンバー一人一人が自分の能力をしっかり発揮できる、チーム全員が同じ方向を向いて協力しあえる、そんな職場づくりに繋がっていきます。

ぜひ、皆さまも、ハラスメントが起こっていないかだけでなく、職場のコミュニケーションの状態にも目を向けてくださいね。

咲良美登理事務所 代表 咲良美登理

社会保険労務士。21世紀職業財団認定ハラスメント防止コンサルタント。中小企業を中心に、ハラスメント相談窓口サービスや窓口担当者養成講座の提供、事案解決サポートや人材育成研修など、ハラスメント対策を起点とした生産性向上のコンサルティングを行っている。
ご相談・お問い合わせ▶https://sakura-midori.jp/contact

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